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大森簡易裁判所 昭和59年(ハ)191号 判決

原告 藤島淑子

右訴訟代理人弁護士 荻津貞則

被告 輿石フク

右訴訟代理人弁護士 小池振一郎

右同 和田裕

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という)を明渡せ。

2  被告は原告に対し昭和五八年七月一日から本件建物の明渡済に至るまで一ヶ月金七万円の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

本案前の申立

主文第一、二項と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、本件建物を所有している。

2  原告は、昭和二九年八月一九日、被告に対し本件建物一階部分を賃貸し、その後、同建物二階部分も被告に賃貸しするようになったが、右賃貸借契約は順次更新され、昭和五三年九月一二日現在における右賃貸借契約(以下本件賃貸借契約という)の内容は次のとおりである。

(一) 賃料 一ヶ月金七万円

(二) 期間 三年間

(三) 特約 (1)被告は原告に無断で賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。

(2)被告が右(1)の約定に反し、又は賃料の支払を二ヶ月分以上怠ったときは、原告は被告に対し通知催告を要せず本件賃貸借契約を解除することができる。

3  被告は、原告に無断で、本件建物を訴外輿石時枝に転貸している。

4  よって、原告は被告に対し、賃貸借契約終了による本件建物の明渡と昭和五八年七月一日から本件建物の明渡済に至るまで一ヶ月金七万円の割合による賃料及び賃料相当損害金の支払を求める。

二  被告の本案前の申立

原告と被告間の本件訴訟は、当庁に係属する本件と同一当事者間の昭和五八年(ハ)第一〇一二号建物明渡請求事件(以下前訴という)と同一事件である。つまり本訴と前訴とは、ともに建物賃貸借契約終了による本件建物の明渡を求めるものであるところ、前訴は賃料不払いによる契約解除を、本訴は無断転貸による契約解除を主張するものであって、両訴は賃貸借契約終了事由の主張を異にするにすぎないものであるから、両訴は同一事件と解され、二重起訴の禁止に抵触する。

理由

原告及び被告間において、本件建物に関し当庁昭和五八年(ハ)第一〇一二号建物明渡請求事件が昭和五八年一一月二九日に係属し、同一裁判所において審理中であること、本訴は昭和五九年二月二四日係属したこと、右前訴の請求原因は、原告は昭和五三年九月一二日被告に対し本件建物を賃料一ヶ月金七万円、賃料の支払は毎月末日限り翌月分を原告方に持参して支払う、賃貸期間は昭和五三年九月一日から同五六年八月三一日までとの約定で賃貸したが、右賃貸借契約はその後法定更新されたが、被告は昭昭和五八年七月一日以降の賃料の支払を怠ったので、原告は被告に対し、同年七月分から同年一一月分までの賃料合計金三五万円を支払わないので、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は同年一一月二三日に被告に到達したこと、よって原告は被告に対し本件建物の明渡と昭和五八年七月一日から本件建物の明渡済に至るまで一ヶ月金七万円の割合による賃料及び賃料相当損害金の支払を求めるものであることは、いずれも当裁判所に顕著な事実である。

右事実によれば、本訴と前訴とは同一の賃貸借契約の契約解除を終了原因としての本件建物の明渡を請求するものであるから同一事件と解される。してみると、本訴の訴提起の時点で既に前訴が係属している本訴は民事訴訟法二三一条の二重起訴の禁止に抵触し、不適法であるから、同法二〇二条により本件訴を却下することにし、訴訟費用の負担については同法八九条により原告に負担させることとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤田親)

〈以下省略〉

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